PCI; ODAでの賄賂は、構造上の問題である。 名前: 渡辺 穣二 [2008/08/07,10:29:09] No.18
2008年8月に入り、たびたび、ベトナム・ホーチミン市でのODA事業受注のため、大手建設コンサルタント会社「パシフィックコンサルタンツインターナショナル」(PCI)による賄賂がニュースになっている。

PCIの担当者が、同市担当局長に賄賂として、受注額の10%程度、約3億円近くを支払ったと言う。

殆どのニュースでは、「国民の金なのですよ。PCIは、とんでもない。」と言うニュアンスで報道がなされていた。

しかし、問題は、それほど、単純なものではない。かつてのシンガポールなどの特別な例を除いて、開発途上国と言うのは、全体が根っこから腐敗した世界なのである。

例えば、開発途上国の政府職員は、正規の給与以外に、裏給与を求めることを当然としている。つまり、裏給与なしで生きていけない組織であり、人々なのだ。

そして、組織の大臣や次官、局長など、上になればなるほど、組織の部下に対して多額の裏報酬を流すことができなくては、自分の地位や将来の出世にも影響する。

特に、日本の援助での円借款(円ローン)は、手続き上、日本政府から相手国政府機関にローンが渡り、開発途上国政府職員が、コンサルタント企業を選抜する形である。

何ヶ月も、場合によっては、2−3年もの期間の営業期間を経て、PCIなどコンサルタント企業が、国際入札で勝ち抜くことが、企業の継続のため、ひいては、社員の生活のために必要なのである。

考えてみて欲しい。

貴方の下に組織があり、組織で働く人々の報酬が、開発途上国での仕事に依存しているとする。

そして、貴方が追い続けたコンサルティングプロジェクトが取れるかどうかの段階に来ているとき、開発途上国の政府の要人に、「なんとかしていただければ、我々も貴社をコンサルタントとして選んで、30億円の仕事を出せるのだが。」と頼まれるのである。資金ソースが、日本政府であっても、貴方の企業を選ぶのは、彼らなのである。

しかも、売上がなくては存在し得ない民間企業の経営者として、そのような要求を断ることができるだろうか。断れば、それまでの営業努力が、無に帰すことが分かっているのである。

従来から、私は、円借款の大きなプロジェクトで、日本人を含めた外国人コンサルタントが開発途上国政府に雇用される現在のやり方は、制度欠陥であると指摘してきた。

PCIの元社長は、TVで、賄賂を支払うことなく、仕事をすることはできないと言明していた。つまり、この問題は、構造的なものなのである。

ODAを正しく実施するためには、資金を提供する日本政府機関が、コンサルタントを直接雇用すべきである。少なくとも今よりはるかにクリーンな手続きができるだろう。

全く腐敗した政府を相手に、クリーンな営業は、不可能なのだ。それが嫌なら、私のようにクリーンな国際機関や我国の援助機関が資金提供する小さな案件だけを、厳密に選択してODAに参加しなければならない。しかし、大きなコンサルティング企業において、そのように利益確保できないことは、営業上、できないのである。

この問題は、監査法人が監査される企業から報酬を得て、不正を見逃す構図に似ている。監査法人は、監査法人の経営や会計士の生活のためには、不正を見逃すことで、報酬を企業から得続けるという形になりがちなのだ。

企業が、監査される資料は、皆過去の行動の結果であり、どうしても訂正できないものもある。数年間と言う契約関係の中で、顧客企業との関係を、自らこじらせることを監査法人は、しにくいのである。

この問題の解決には、顧客企業とは、全く別の機関、例えば、第三者となれる株式市場の運営会社などに顧客の上場企業がフィーを提供し、その第三者が監査法人を選び、上場企業に監査を受けさせる形を作れば良い。

構造上の問題を直さずして、誰々だけを責めれば、問題解決できるものではないのである。倫理的行動が絶対重要であることは、誰でも知っている。しかし、どんなに規定を決めようと外部からの監査を二重にしても、長期には、金の流れる方向が圧倒的な力を有するのである。

さらに言えば、様々な倫理上の問題が起こることを望むグループがあることも理解しなくてはならない。彼らは、問題がある度に活躍する政府機関の人々である。彼らは、問題を抜本的に解決するよりも、問題がたびたび起こり、それにより自分たちの存在理由があることを示す必要がある人たちである。

抜本的な解決策について、国民と政治家が深く考える必要がある。


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